大混戦となった2021年NFLレギュラーシーズンの第12週目は木曜日のサンクスギビング(感謝祭)に組まれた3試合を皮切りに、今週も大きな波乱に満ちていた。勝ち星をさらに積み上げた上位チームがいくつかあった一方で、下位チームが上位勢を破った試合も多くあった。
ランキング1位のアリゾナ・カーディナルスと、最近もっとも急激に順位を上げているカンザスシティ・チーフスは、ともにバイ・ウィークで試合がなかった。その間に両チームの背後や周辺で大きな動きがあった。ランキングの上から下まで、いくつかの意外な結果が順位を変動させた。
第13週目を迎える全32チームの、スポーティングニュースが見る状況は以下の通りである。
NFL パワーランキング
アリゾナ・カーディナルス、9勝2敗 (前回の順位:1)
カーディナルスはNFLで最高の戦績を保ったまま、第12週目のバイ・ウィークに入った。カイラー・マレー(クォーターバック)、ディアンドレ・ホプキンス(ワイドレシーバー)、チェイス・エドモンズ(ランニングバック)を欠きながらも、攻撃陣をうまくやり繰りしている。攻撃陣に故障者が戻ってくるうえ、守備陣は現在のバランスを維持するべきだろう。ロサンゼルス・ラムズとの一騎打ちの様相を帯びてきたNFC西地区の優勝争いに注目が集まる。
2. グリーンベイ・パッカーズ、9勝3敗 (2)
パッカーズはNFCカンファレンス内で強敵のラムズを相手に貴重な勝利を挙げた。アーロン・ロジャース(クォーターバック)は高いレベルのプレイが戻ってきた。ラン攻撃陣と守備陣もいくつかのビッグプレイを演出した。同カンファレンスからスーパーボウルに進出する可能性がもっとも高いチームであり続けている。
3. タンパベイ・バッカニアーズ、8勝3敗 (5)
バッカニアーズは敵地で行われたインディアナポリス・コルツ戦で厳しい戦いに勝利した。トム・ブレイディ(クォーターバック)とレナード・フォーネット(ランニングバック)の活躍が目立ったが、守備陣は相変わらずパス攻撃への脆弱さを克服できていない。守備陣に主力の何人かが戻ってきたにもかかわらず、だ。少なくとも、ラン攻撃に対する守備力は元の力強さを取り戻してきた。ビータ・ベア(ディフェンシブタックル)が帰ってきて、ジョナサン・テイラー(コルツのランニングバック)によく対抗していた。
4. ニューイングランド・ペイトリオッツ、8勝4敗 (9)
ペイトリオッツはますますビル・ベリチック(ヘッドコーチ)の伝統的な戦略モードに近づいてきている。相手の弱点を突き、自身の長所を変えていくことによって、相手を破る方法だ。テネシー・タイタンズ戦では、マック・ジョーンズ(クォーターバック)はパス主体の作戦を取り、守備陣はラン攻撃に対してまずまずの防御を見せた。今やベリチックは10年以上振りになる最優秀コーチ賞の有力候補である。
5. ボルティモア・レイブンズ、8勝3敗 (6)
レイブンズは日曜夜の試合でクリーブランド・ブラウンズに勝利し、AFC北地区1位とカンファレンスのトップシードに近づいてきた。同地区内にいるシンシナティ・ベンガルズには1ゲーム差での優位を保った。ジョン・ハーボー(ヘッドコーチ)には派手さはないが、ベリチックと同じように、要所要所で選手たちの力を上手く引き出している。
6. テネシー・タイタンズ、8勝4敗 (3)
タイタンズはデリック・ヘンリー(ランニングバック)ラッシュ攻撃力に代わって、ライアン・タネヒル(クォーターバック)のパス攻撃に頼ろうとする大胆な試みを敢行した。だが、主要な課題であったパスに対する守備力の弱さをさらに広げてしまった。A.J. ブラウン(ワイドレシーバー)とフリオ・ジョーンズ(ワイドレシーバー)を欠いたままでは、高得点の試合を制することは難しい。
7. カンザスシティ・チーフス、7勝4敗 (7)
チーフスは第12週目がバイ・ウィークで試合がなかったが、11月に入ってからそれまで、チームの状態は大きく改善されている。シーズン中盤で攻撃陣も守備陣も本来の力を取り戻し、かつてアンディ・リード(ヘッドコーチ)の指揮の下でまとまっていた姿に近づいている。この方向を力強く推し進めることで、AFCカンファレンス優勝候補に再び名乗りを上げるチャンスが大きくなるだろう。
8. バッファロー・ビルズ、7勝4敗 (11)
ビルズはサンクスギビング(感謝祭)に行われたニューオーリンズ・セインツ戦で大勝した。ジョシュ・アレン(クォーターバック)は持ち味であるパス攻撃に終始し、ドーソン・ノックス(タイトエンド)とステフォン・ディッグス(ワイドレシーバー)を上手く使った。守備陣も調子を取り戻し、主力を欠いた対戦相手のパスとランを上手く防いだ。
9. ダラス・カウボーイズ、7勝4敗 (8)
カウボーイズはラスベガス・レイダースに惜敗した。アマリ・クーパー(ワイドレシーバー)とシーディー・ラム(ワイドレシーバー)を欠き、ダック・プレスコット(クォーターバック)のパス攻撃に頼ろうとしたが、本来ならラン攻撃主体のチームであるだけに、守備陣の大量失点をカバーするには至らなかった。12月の重要な連戦に備えて、エゼキエル・エリオット(ランニングバック)を休ませることを考えている。
10. シンシナティ・ベンガルズ、7勝4敗 (12)
ベンガルズはバイ・ウィーク明けからの2試合でレイダースとピッツバーグ・スティーラーズを連破した。これによりニューヨーク・ジェッツとクリーブランド・ブラウンズに喫した敗北から立ち直り、シーズン前半のようにAFCからのプレーオフ進出を狙える位置に戻ってきた。ジョー・バロウ(クォーターバック)とジョー・ミクソン(ランニングバック)のコンビは攻撃陣を引っ張り、また守備陣も本来の力を取り戻してきた。
11. ロサンゼルス・ラムズ、7勝4敗 (4)
ラムズは3連敗となり、大きく順位を落とした。マシュー・スタッフォード(クォーターバック)は最優秀選手賞(MVP)候補から一転して、インターセプト献上マシーンになってしまった。あまりにも大きなパスを狙いすぎていたのだ。ショーン・マクベイ(ヘッドコーチ)にとっても誤算だっただろう。ラン攻撃とクーパー・クップ(ワイドレシーバー)をもっとよく使う作戦に立ち戻るべきだ。なぜならこのチームの守備力はどのチームに比べても秀でていないからだ。
12. サンフランシスコ・49ers、6勝5敗 (18)
49ersはミネソタ・バイキングスとの接戦を制した。ジミー・ガロポロ(クォーターバック)ら攻撃陣はカイル・シャナハン(ヘッドコーチ)の期待に応えた。守備陣はまだ全体的に苦しんでいるが、重要な場面で踏ん張った。
13. ロサンゼルス・チャージャーズ、6勝5敗 (10)
チャージャーズは敵地デンバーで行われたブロンコス戦で手痛い敗北を喫した。同じAFC西地区ではラスベガス・レイダースが勝利し、1位のチーフスに試合がなかったため、どうしても勝たなくてはいけない試合だった。ジャスティン・ハーバート(クォーターバック)はやや乱調であったし、守備陣は不安定で、とくにラン攻撃に対して弱かった。
14. ラスベガス・レイダース、6勝5敗 (17)
レイダースはサンクスギビング(感謝祭)に敵地ダラスで行われたカウボーイズ戦で大きな勝利を挙げた。これによって、消えかかっていたAFCワイルドカード枠争いに望みをつないだ。不調だったデレック・カー(クォーターバック)、ジョシュ・ジェイコブス(ランニングバック)ら攻撃陣は調子を取り戻してきた。守備陣も復調すれば、シーズン後半の挽回が期待できる。
15. デンバー・ブロンコス、6勝5敗 (21)
ブロンコスはバイ・ウィーク明けの試合でチャージャーズに快勝した。ラン攻撃は力強さを増し、守備陣はビック・ファンジオ(ヘッドコーチ)の期待に応える今までで最高のレベルだった。相手のランによく対応し、パス・ラッシュも見せた。
16. クリーブランド・ブラウンズ、6勝6敗 (13)
ブラウンズの攻撃陣が問題を抱えているのは誰の目にも明らかだ。ニック・チャブ(ランニングバック)とカリーム・ハント(ランニングバック)をもっと使ってラン攻撃を多用しない限りは浮上のチャンスはない。ベイカー・メイフィールド(クォーターバック)の耐久性には懸念があるうえ、サポートするメンバーも弱いからだ。昨シーズンからの奮起が期待された今シーズンも、どうやら故障によって失われてしまったようだ。
17. ピッツバーグ・スティーラーズ、5勝5敗1分け (15)
スティーラーズはAFC北地区の首位から最下位へと一気に転落してしまった。ベンガルズ戦での大敗で見られたように、ラン攻撃に対する守備力の弱さが最大の問題だ。パスのカバーとパス・ラッシュの弱さも目立ち、ベン・ロスリスバーガー(クォーターバック)の出場機会が制限されている攻撃陣は力を発揮できない。
18. インディアナポリス・コルツ、6勝6敗 (16)
コルツは本拠地でバッカニアーズを相手に最後まで分からない戦いを見せたが、あまりにも多くのミスを冒してしまった。ジョナサン・テイラー(ランニングバック)とカーソン・ウェンツ(クォーターバック)は打倒ブレイディを果たすことはできなかった。コルツは今シーズンの岐路に立っている。AFC南地区ではタイタンズとの差が広がり、2年連続のワイルドカード枠争いも厳しい状況になっている。
19. ミネソタ・バイキングス、5勝6敗 (14)
バイキングスはまたしても強敵相手に1タッチダウン差での敗北を喫した。12月に向けて、気分を切り換えなくてはならない。マイク・ジマー(ヘッドコーチ)にとって、プレーオフ進出の望みを繋ぐためには、最大の課題は守備力である。カーク・カズンズ(クォーターバック)と攻撃陣はミスが少ない。
20. フィラデルフィア・イーグルス、5勝7敗 (19)
イーグルスはニューヨーク・ジャイアンツ戦で再びラン主体の作戦によってロースコアの試合を制することを目論んだ。しかし、ジェイレン・ハーツ(クォーターバック)は後半にパスが少し良くなったものの、今シーズン最悪の試合を演じてしまった。それでもこのチームはまだプレーオフ進出の望みを残している。
21. アトランタ・ファルコンズ、5勝6敗 (24)
ファルコンズはジャクソンビル・ジャガーズという対戦相手に恵まれ、攻撃陣でもっとも頼りになる戦力でチームMVPのコルダレル・パターソン(ランニングバック)も戻ってきた。マット・ライアン(クォーターバック)とアーサー・スミス(ヘッドコーチ)にとっては理想的な勝利ではなかったが、それでも2020年には4勝しか挙げられなかったことを思えば、今年の勝利数は既にそれを上回っている。
22. ニューオーリンズ・セインツ、5勝6敗 (20)
セインツの転落が止まらない。2年連続のプレーオフ進出が確実視されていたチームだったが、攻撃陣に故障者が相次ぎ、守備陣は戦力不足で、勝利への戦略が成り立たなくなってしまった。シーズン中盤の4連敗は取り戻すことが難しい。
23. ワシントン・フットボール・チーム、5勝6敗 (23)
ワシントンはバッカニアーズとカロライナ・パンサーズに連勝した勢いのまま、シアトル・シーホークスにも勝利した。テイラー・ハイニッケ(クォーターバック)の積極的な攻撃が光っている。プレーオフ進出は難しいだろうが、翌2022年シーズンに向けて、良い状態でシーズンを終えることが重要である。
24. カロライナ・パンサーズ、5勝7敗 (22)
何が起きたのだろうか。パンサーズはマイアミ・ドルフィンズ戦で頼みとしたキャム・ニュートン(クォーターバック)のパス攻撃がまったくの不発だった。P.J.ウォーカー(クォーターバック)も起用することで、チームの方向性が混乱しているようだ。守備陣も調子を落としている。2年連続の苦境であるが、今年の状況はさらに苦しい。
25. ニューヨーク・ジャイアンツ、4勝7敗 (26)
ジャイアンツは上り調子のイーグルスを下した。守備陣の作戦が当たったことが大きい。新たに攻撃コーディネーターに就任したフレディ・キッチンズの意図はダニエル・ジョーンズ(クォーターバック)ら攻撃陣を少し混乱させているようだ。いずれにしても、このチームは2022年シーズンに向けて大きな変化を必要としている。
26. マイアミ・ドルフィンズ、5勝7敗 (27)
ドルフィンズはブライアン・フローレス(ヘッドコーチ)の指揮の下で10勝6敗の成績だった2020年シーズンとは別のチームになってしまった。しかし、トゥア・タゴヴァイロア(クォーターバック)の調子が上向き、チームをこれで4連勝だ。守備陣も好調で、チームは本来のあるべき姿に戻ってきたようである。
27. シアトル・シーホークス、3勝8敗 (25)
シーホークスはラッセル・ウィルソン(クォーターバック)が不調で、ラン攻撃陣も主力を欠き、攻撃力が極端に悪化してしまっている。ワシントン戦では守備陣もほとんど機能せず、ウィルソンがいてもいなくても、勝利から遠ざかっている。
28. シカゴ・ベアーズ、4勝7敗 (28)
ベアーズはサンクスギビング(感謝祭)に敵地デトロイトで行われたライオンズ戦に勝利し、連敗を止めた。ダーネル・ムーニー(ワイドレシーバー)とデビッド・モンゴメリー(ランニングバック)を攻撃の中心に据えた作戦が実った。マット・ナギー(ヘッドコーチ)にとって、カリル・マック(ラインバッカ―)を欠きながらも健闘した守備陣の働きも大きかった。
29. ニューヨーク・ジェッツ、3勝8敗 (31)
ジェッツは第11週目のドルフィンズ戦で順位を上げることができなかったが、敵地ヒューストンでのテキサンズ戦では勝利した。膝の故障から復帰したザック・ウィルソン(クォーターバック)の状態は良く見えなかったが、それでもラッシングでの得点によって勝利を挙げたことは、シーズン終盤に向けて大きな自信につながるだろう。
30. ヒューストン・テキサンズ、2勝9敗 (29)
テキサンズはジェッツ戦の試合前半は調子が良く、2連勝を飾るかと思われた。だが、このチーム最大の問題はタイロッド・テイラー(クォーターバック)の周りにいる攻撃陣が単純に戦力不足であることだ。守備力は向上していきている。デビッド・カリー(ヘッドコーチ)は乏しい戦力のなかで、最良の指揮を取っている。
31. ジャクソンビル・ジャガーズ、2勝9敗 (30)
ジャガーズは本拠地でファルコンズという相手に恵まれたものの、またしても試合前半のスロースタートがたたった。相変わらず、トレバー・ローレンス(クォーターバック)のパス攻撃は輝きを見せず、守備陣はラン攻撃に対してあまりにも無力だ。
32. デトロイト・ライオンズ、0勝10敗1分け (32)
ライオンズは最近になって守備陣が健闘し、対戦相手を脅かし始めている。しかし、残念なことに、攻撃陣が戦力不足で勝利を上げることができない。ダンドレ・スウィフトが故障したのもさらなる痛手だ。
(翻訳:角谷剛)