第10週目のNFLは第9週目ほどの大波乱には見舞われなかったものの、それでもパワーランキング上位順位が大きく変動するだけの出来事はあった。主力を欠いた前週のランキング第1位チームが敗北し、3週連続でトップチームが入れ替わる事態となった。
カンファレンス内と交流試合の両方で大きな意味をもつ結果があり、すべての地区で順位の変動があった。プレーオフ進出へ力強く進んだチームもあれば、シーズン後半の不調がさらに悪化したチームもある。
第11週目を迎える32チームの状況は以下の通りである。
NFL パワーランキング
1. テネシー・タイタンズ、8勝2敗 (前回の順位:3)
タイタンズはプレーオフ進出を視野に入れたチームから劇的な勝利を挙げた。第1位にランキングされるに相応しい。マイク・ブラベル(ヘッドコーチ)は今年の最優秀コーチに選ばれるかもしれない。過去2シーズンを勝ち越してきた経験が今になって大きく開花しようとしている。
2. グリーンベイ・パッカーズ、8勝2敗 (4)
パッカーズはアーロン・ロジャース(クォーターバック)を欠いた第9週目で敗北したが、第10週目ではシアトル・シーホークスを一蹴し、再び優勝戦線に戻ってきた。守備陣は完璧で、ラン攻撃を多用することで、不調だったロジャースをカバーした。あとはアーロン・ジョーンズ(ランニングバック)の戦線離脱が長引かないことを祈るだけだろう。
3. アリゾナ・カーディナルス、8勝2敗 (1)
カーディナルスはカイラー・マレー(クォーターバック)とディアンドレ・ホプキンス(ワイドレシーバー)を欠いても1試合は勝つことができたが、2試合目はそうはいかなかった。ターンオーバーを奪えなかったし、守備陣はラン攻撃に対して非常にもろかった。どうやら、カーディナルスは勢いが衰えてきていることを隠せなくなったようだ。
4. ダラス・カウボーイズ、7勝2敗 (7)
カウボーイズはアトランタ・ファルコンズ戦で攻撃陣が大爆発して、前週の敗北を挽回した。ダック・プレスコット(クォーターバック)、エゼキエル・エリオット(ランニングバック)、シーディー・ラム(ワイドレシーバー)らがファルコンズの守備陣から大量得点を挙げて圧勝した。トレボン・ディグス(コーナーバック)ら守備陣の働きも大きかった。ダン・クイン(守備コーディネーター)はかつてヘッドコーチとして指揮を執った古巣のファルコンズからこれ以上なく嬉しい勝利を挙げた。
5. バッファロー・ビルズ、6勝3敗 (8)
ビルズは前週にジャクソンビル・ジャガーズ戦で不覚を取ったが、今週のニューヨーク・ジェッツには大勝し、悪い流れを断ち切った。攻撃陣の立て直しは成功し、守備陣をサポートした。ラン攻撃が強化され、ジョシュ・アレン(クォーターバック)の調子も戻ってきた。ビッグプレイを狙った相手守備陣に付け入る隙を見せなかった。
6. ロサンゼルス・ラムズ、7勝3敗 (6)
日曜日にカーディナルスが敗れ、タンパベイ・バッカニアーズは2連敗を喫したことで、ラムズはNFC西地区のトップに躍り出るチャンスを手にした。しかし、月曜夜の試合でサンフランシスコ・49ersに敗れ、そのチャンスをものにすることはできなかった。
7. タンパベイ・バッカニアーズ、6勝3敗 (2)
何が起きたのだろうか。バッカニアーズはバイ・ウィークの後でも調子を戻すことができず、2連敗を喫した。トム・ブレイディ(クォーターバック)は前半苦しみ、守備陣はワシントン・フットボール・チームの攻撃に対して無力だった。とくにラン攻撃には大崩れになってしまった。史上最高選手(GOAT)と呼ばれるブレイディを中心に、この前年度スーパーボウル覇者はシーズン中盤の重大な岐路に立ち向かわなければならない。
8. ボルティモア・レイブンズ、6勝3敗 (5)
何が起きたのだろうか。
レイブンズは敵地のマイアミ・ドルフィンズ戦でラマー・ジャクソン(クォーターバック)と攻撃陣が調子に乗った相手守備陣に翻弄され、格下相手に手痛い敗北を喫してしまった。レイブンズはプレーオフ進出を狙うためにすべての条件が整いつつあるように見えるが、パス攻撃によって調子を上げるか、あるいはパス攻撃に対する守備が足を引っ張ってしまうだろう。
9. カンザスシティ・チーフス、6勝4敗 (10)
チーフスは敵地ながら本拠地試合のようだったラスベガス・レイダース戦で危なげない勝利を収めた。パトリック・マホームズ(クォーターバック)もバランスと忍耐力を取り戻してきたようだ。さらに重要なことは、守備陣も再び力強い働きを見せたことだ。シーズン後半に向けて良い兆候である。
10. ニューイングランド・ペイトリオッツ、6勝4敗 (16)
ペイトリオッツはビル・ベリチック(ヘッドコーチ)の指揮の下、マック・ジョーンズ(クォーターバック)を中心に据えた方程式を確立した。ラン攻撃を多く使い、ジョーンズにパスのためのスペースを空け、そして守備を固める。シーズン当初はAFCのワイルドカード枠を争うことが精一杯と思われたが、早くもプレーオフ進出を視野に入れた位置まで上昇してきた。
11. ロサンゼルス・チャージャーズ、5勝4敗 (9)
チャージャーズの強力な攻撃陣はまたも失速した。ジャスティン・ハーバート(クォーターバック)の得意とする長いパスが影を潜めた。ラン攻撃に対する守備力の弱さがかねてから指摘されていたが、ここにきてパス攻撃に対しても問題が見え始めた。
12. ラスベガス・レイダース、5勝4敗 (11)
レイダースは本拠地でチーフスに敗れ、プレーオフ戦線から脱落した。同じように敗れたチャージャーズに次いで、地区3位の位置につけている。デレック・カー(クォーターバック)は守備力の弱さをカバーしようと懸命だが、再び大事な場面でミスが目立ってきた 。
13. ピッツバーグ・スティーラーズ、5勝3敗1分け (12)
スティーラーズはベン・ロスリスバーガー(クォーターバック)を欠き、パス攻撃を使うことができず、デトロイト・ライオンズと引き分けてしまった。相手チームの脆弱な守備力を考えると、残りの攻撃陣はできることがもっとあったはずだ。プレーオフ戦線に残る可能性があるチームであることを証明するか、それともこのままシーズンを諦めるかの瀬戸際にきている。
14. ニューオーリンズ・セインツ、5勝4敗 (13)
セインツはバッカニアーズとの大一番に勝利した後で2連敗を喫してしまった。攻撃陣の調子が今一つ上がらないため、接戦を制することができないでいる。守備陣にも埋めるべき穴がある。
15. シンシナティ・ベンガルズ、5勝4敗 (15)
ベンガルズはバイ・ウィークで試合がなかった。同じAFC北地区のレイブンズとクリーブランド・ブラウンズがともに負け、スティーラーズが引き分けたことは、喜ばしいニュースだったはずだ。ジョー・バロウ(クォーターバック)はシーズン後半戦でチームを奮い立たせるためにあらゆるチャンスを作るだろうが、守備陣は開幕直後の力を取り戻す必要がある。
16. クリーブランド・ブラウンズ、5勝5敗 (14)
ブラウンズの攻撃陣はラン攻撃が高いレベルで機能しないときはチームを勝利させることはできない。そのため、ペイトリオッツ戦のように、守備陣に元気がなく、対応できないでいると、このチームには他に勝つ術がなくなってしまう。ケビン・ステファンスキー(ヘッドコーチ)とコーチング・スタッフはシーズン後半戦でもっと大胆な作戦を取らなくてはいけない。そうでなければ、プレーオフ戦線から滑り落ちてしまうだろう。
17 ミネソタ・バイキングス、4勝5敗 (20)
バイキングスは接戦での戦いに良くなってきた。ダルヴィン・クック(ランニングバック)の力強いランとジャスティン・ジェファーソン(ワイドレシーバー)のキャッチが力を発揮してきた。混戦のNFCのワイルドカード枠争いに戻る望みが出てきた。
18. カロライナ・パンサーズ、5勝5敗 (22)
パンサーズはカイラー・マレーを欠いたカーディナルスを圧倒し、貴重な勝利を収めた。攻撃陣は試合前半で大量点を挙げた。もっとも爆発的だったのは戻ってきたばかりのキャム・ニュートン(クォーターバック)ではなく、クリスチャン・マカフリー(ランニングバック)だったが、ニュートンが見せた2つの印象的なプレイは次戦でワシントン・フットボール・チームとロン・リベラ(ヘッドコーチ)を相手に先発するに十分かどうかが問われる。
19. インディアナポリス・コルツ、5勝5敗 (19)
コルツは勝率を5割に戻した。ジョナサン・テイラー(ランニングバック)がリードしたラッシング攻撃と要所を抑えた守備力によるところが大きい。あるいは昨シーズンにチームをプレーオフ進出へ導いたフランク・ライク(ヘッドコーチ)の作戦が功を奏してきたのかもしれない。だが、カーソン・ウェンツ(クォーターバック)が本来の調子を取り戻せるかどうかが、今後を占う本当の意味でのカギとなるだろう。
20. デンバー・ブロンコス、5勝5敗 (17)
ブロンコスは本拠地でフィラデルフィア・イーグルスに大敗した。攻撃はちぐはぐで、守備力も失われた。前週に敵地でカウボーイズを破ったときとまるで反対だった。大きな変化がなければ、シーズン後半戦で転落してしまうだろう。
21. アトランタ・ファルコンズ、4勝5敗 (18)
ファルコンズも評価が難しい中間順位チームの1つだ。セインツ戦でシーズン最高のパフォーマンスを見せたと思えば、翌週にはカウボーイズに大敗してしまった。マット・ライアン(クォーターバック)と攻撃陣には改善の気配がなく、守備陣の問題によって、さらに厳しいプレッシャーに晒されている。
22. フィラデルフィア・イーグルス、4勝6敗 (26)
イーグルスはついにジェイレン・ハーツ(クォーターバック)のパスをサポートし、伝統的なラッシング攻撃を使うことを決断した。そしてその作戦は功を奏し、ハーツは腕と脚を活かすことができた。守備陣も対応が良くなりつつあり、ニック・シリアニ(ヘッドコーチ)はチームを改善する方法を探し続けている。
23. サンフランシスコ・49ers、4勝5敗 (18)
49ersにとって月曜夜のラムズ戦はNFCのプレーオフ戦線になんとかしがみつくために絶対に勝たなくてはならない試合だった。もし負けていたら、カーディナルスとラムズから遠く引き離され、カイル・シャナハン(ヘッドコーチ)はまたも怪我人だらけの期待外れなシーズンに近づいていただろう。
24. シアトル・シーホークス、3勝6敗 (21)
シーホークスはラッセル・ウィルソン(クォーターバック)が指の故障から復帰した。チームも本来の調子を取り戻すはずだったが、どうやら復帰は時期尚早だったようだ。攻撃陣はその影響を受け、0点に抑えられてしまった。守備陣はいつも以上の働きを見せたいただけに、非常に残念な結果になってしまった。
25. ワシントン・フットボール・チーム、3勝6敗 (29)
ワシントンはバッカニアーズ戦でチェイス・ヤング(ディフェンシブエンド)が膝の故障で途中欠場したにもかかわらず、守備陣がようやく力を発揮した。テイラー・ハイニッケ(クォーターバック)はまだ長期的解決策ではないが、それでもライアン・フィッツパトリック(クォーターバック)が復帰するまでは彼を頼らざるを得ないだろう。ロン・リベラ(ヘッドコーチ)は続投に向けて、この2人の奮闘は称賛に値する。
26. シカゴ・ベアーズ、3勝6敗 (24)
ベアーズはバイ・ウィークで試合がなく、新人のジャスティン・フィールズ(クォーターバック)を休ませることができた。守備陣も本来のレベルに戻ることができただろうか。
27. ニューヨーク・ジャイアンツ、3勝6敗 (27)
ジャイアンツもまたバイ・ウィークで試合がなかった。セイクワン・バークリー(ランニングバック)率いる攻撃陣がいかに復調できたかがカギになる。ダニエル・ジョーンズ(クォーターバック)は2022年もポジションを確保するためにはシーズン後半戦で活躍しなくてはならない。
28. マイアミ・ドルフィンズ、3勝7敗 (30)
ドルフィンズの守備陣はブライアン・フローレス(ヘッドコーチ)の意図通りに積極的なプレイを見せ始めた。攻撃陣の弱点を補っている。2年目のトゥア・タゴヴァイロア(クォーターバック)は期待通りの活躍を見せていない。
29. ジャクソンビル・ジャガーズ、2勝7敗 (27)
ジャガーズは遠征時に調子が悪くなる。守備陣はいつもより良い仕事をしているにもかかわらずだ。ジェームズ・ロビンソン(ランニングバック)の調子が悪いと、攻撃陣はトレバー・ローレンス(クォーターバック)の足を引っ張ってしまう。
30. ニューヨーク・ジェッツ、2勝7敗 (26)
ジェッツはマイク・ホワイト(クォーターバック)がビルズの強力な守備陣に対抗できなかった。だが、ザック・ウィルソン(クォーターバック)は間もなく復帰すると見られている。守備陣はロバート・サラー(ヘッドコーチ)の指揮の下、改善へ向けて懸命な努力を続けているが、2022年シーズンに向けて埋めるべき穴は多くある。
31. ヒューストン・テキサンズ、1勝8敗 (31)
テキサンズはバイ・ウィークで試合がなかった。デショーン・ワトソン(クォーターバック)を欠き、AFC最下位チームとして、これ以上落ちることはなかった。新人ヘッドコーチであるデビッド・カリーのために、シーズンをもう少しマシな終わり方をしなくてはいけないだろう。
32. デトロイト・ライオンズ、0勝8敗1分け (32)
ライオンズは延長戦でなんとか引き分けを拾い、NFL史上初の0勝17 敗チームになることを免れた。ダン・キャンベル(ヘッドコーチ)は全力を尽くしてはいるが、このまま0勝で終わる可能性は依然として大きい。
(翻訳:角谷剛)