超有望株のワンダー・フランコがレイズと結んだ11年213億円の巨大契約の内容

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ワンダー・フランコはこれまでにメジャーリーグのレギュラーシーズンで281回打席に立った。たったそれだけで巨大な報酬を得ようとしている。そしてそれはタンパベイ・レイズの球団歴史上で最大の契約になる。

スポーツ専門局『ESPN』のジェフ・パッサン記者によると、フランコは11年・1億8500万ドル(約213億円)の延長契約をレイズと結んだ。これは2012年にレイズがエバン・ロンゴリア3塁手と結んだ6年・1億ドル(約115億円)を大幅に上回るものだ。

ワンダー・フランコ遊撃手とタンパベイ・レイズは1億8500万ドル(約213億円)が保証された12年間契約に大筋で合意したと情報筋がESPNに語った。この契約は最大で2億2300万ドル(約254億円)に達する可能性がある。現在はいくつかの詳細を調整中とのことである。この20歳の若者はレイズに長く留まることになる。

フランコの契約はまだメジャーリーグ経験が浅い若手有望株選手が結んだ巨大契約のなかでも最新のものだ。フランコが球団の顔に相応しい才能であるというレイズの確信を明確に示している。

 

ワンダー・フランコの契約詳細

フランコは今シーズンに限られた時間の中で強烈な印象を残した。フランク・ロビンソンが持っていた20歳以下選手の連続試合出塁記録に並び、レギュラーシーズンでたった70試合にしか出場していないにもかかわらず、アメリカン・リーグ新人王投票で3位に選出された。

フランコは早くもスター選手のような報酬を受け取ることになる。

フランコが11年間で受け取る平均年俸は1680万ドル(約19億4000万円)で、この金額はメジャーリーグのスター選手が受け取る報酬に比べるとかなり低い。しかし、レイズが2022年に払う、あるいはかつて払ったどの選手の年俸もより高いのだ。スポーツデータ解析サイト『Spotrac』によると、ケビン・キアマイアーの年俸が1220万ドル(約14億2000万円)で2022年最高額になるはずだった。Spotracはロンゴリアが2017年にレイズから1300万ドル(約15億円)を受け取ったこと、それがレイズの球団史上最高額の単年年俸であることも報告している。

パッサンは12年目に2500万ドル(約29億円)の延長オプションがあることを報じている。さらに2028年からはアメリカン・リーグ最優秀選手賞(MVP)投票5位以内に入った場合には300万ドル(約3億4600万円)のボーナスが加算されるという。契約にはトレード拒否条項は含まれていない。もしフランコが他球団にトレードされた場合、さらに300万ドル(約3億4600万円)を受け取ることにもなる。

フランコは長い期間に渡って野球界きってのスター選手になると見られてきた。わずか16歳のときに国際フリーエージェントとして契約金382.5万ドル(約4億4110万円)でレイズに入団した。最年少ながら、マイナーリーグのどの階層でもパワー溢れる打撃力、盗塁のためのスピード、そして遊撃手として抜群の守備力を見せてきた。

フランコがマイナーリーグに在籍したのは通算で3年にしかならない。マイナーリーグ自体が中止された2020年シーズンはそれには含まれない。2Aを完全に飛び級し、2021年には3Aデビューを果たした。メジャーリーグに昇格するまでの40試合で挙げた成績は、打率.313、出塁率.372、長打率.583、本塁打7本、そして盗塁5個だった。

レイズにメジャー招集され、6月22日にはメジャーデビューを果たした直後から、フランコはスター選手としての能力を発揮し始めた。デビュー戦では4打数2安打、1本塁打、1四球。その後の4試合は無安打だったが、シーズン残りの試合で、打率.302、出塁率.354、長打率.473、本塁打6本、四死球20個、そしてわずかに32三振の成績を挙げた。7月25日にシングルヒットで出塁したことを皮切りに、それから43試合連続で出塁し、ロビンソンの記録に並んだ。この期間中、ハムストリングの故障で2週間戦列を離れたことがあったが、故障者リストから復帰した直後の4試合でも出塁を記録した。

フランコはポストシーズンでもスポットライトに委縮することはなかった。4試合すべてで出塁し、複数の安打を放った。ボストン・レッドソックスを相手にした4試合の成績は、打率.368、出塁率.368、長打率.789、本塁打2本、打点4,そしてわずかに三振3個だった。

 

類似した契約

レイズはケチな球団として悪名高いが、若い選手に長期契約を結んだことがこれまでにまったくなかったわけではない。

ロンゴリアとはメジャーリーグでのキャリアが始まってすぐに、6年・1750万ドル(約20億1800万円)の契約を結び、かつて球界きっての有望株選手と評価されていたマット・ムーアは、2011年9月にメジャーデビューを果たした直後、5年・1400万ドル(約16億1400万円)の契約延長をレイズと結んだ。クリス・アーチャーはメジャー2年目のシーズン後に、6年・2550万ドル(約29億4000万円)の契約延長にサインして、レイズに留まることになった。2019年シーズン前にブランドン・ロウが6年・2400万ドル(約27億7000万円)の契約をレイズと結んだときは、それまでメジャーリーグでの出場経験はわずか43試合でしかなかった。

そして、フランコはメジャーリーグでのキャリア初期に巨大契約を結んだ最新の有望株選手になった。レイズ以外での有名な契約延長の例は以下の通りである。その時点で出場していたMLBでの試合数も併記してある。

選手名 チーム 契約年数 総額 MLB試合数
ティム・アンダーソン シカゴ・ホワイトソックス 2017 6 2500万ドル
約28億8千万円
99
ポール・デヨング セントルイス・カージナルス 2018 6 2600万ドル
約30億円
108
スコット・キンガリー フィラデルフィア・フィリーズ 2018 6 2400万ドル
約27億円7000万円
0
オジー・アルビーズ アトランタ・ブレーブス 2019 7 3500万ドル
約40億円4000万円
226
エロイ・ヒメネス シカゴ・ホワイトソックス 2019 6 4300万ドル
約49億円6000万円
0
ロナルド・アクーニャ・ジュニア アトランタ・ブレーブス 2019 8 1億ドル
約115億円4000万円
115
エバン・ホワイト シアトル・マリナーズ 2019 6 5500万ドル
約63億円5000万円
0
ルイス・ロベルト シカゴ・ホワイトソックス 2020 6 5000万ドル
約57億円7000万円
0
フェルナンド・タティス・ジュニア サンディエゴ・パドレス 2021 14 3億4000万ドル
約392億円3000万円
143

言うまでもないことだが、こうした巨大契約には双方にリスクと利点がある。球団にとっては早い段階で支出金額を約束しなくてはならない。将来的に選手のパフォーマンスが落ちるか、あるいは故障によって戦線離脱してしまうかもしれない。その一方で、球団は若いスター選手を球団に有利な条件で繋ぎ止めることができる。それによってフリーエージェントになってからの数年間にかかるコストがより安くなるのだ。フランコの場合は本来なら6年間しか球団の支配下におけなかったのだが、この契約によって最低でも11年間をレイズに繋ぎ止めることができる。

選手にとっては、収入が保証されるうえ、その金額はキャリア初期に年俸調停で得られる額よりはるかに高くなる。フランコの場合は2022年の年俸は50万ドル(約5770万円)を少し越える程度になるはずだったのだ。しかしながら、もし選手が大スターに成長した場合、本来フリーエージェントで得られるはずの巨大な契約とより高額な金額を失うことになる。

フランコの契約は一度もフルシーズンを出場したことがない選手としては過去最大のものだ。アクーニャがブレーブスと結んだ8年・1億ドル(約115億円4000万円)の契約より大きいのだ。

メジャーリーグ在籍3年以上6年未満の選手に与えられる年俸調停の資格を得る前の選手としては、タティスが今でも最大の契約記録を持っている。さらに言えば、それはMLBの歴史でも過去3番目に大きい契約なのである。その上をいくのは、マイク・トラウトが2020年にロサンゼルス・エンゼルスと結んだ12年・4億2600万ドル(約491億円)と、ムーキー・ベッツがロサンゼルス・ドジャースと結んだ12年・3億6500万ドル(約421億円)の延長契約のみである。

(翻訳:角谷剛)

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