現地時間10月9日にT-モバイルアリーナで11回KO負けを喫したデオンテイ・ワイルダー(米国)が、勝者でWBC世界ヘビー級王者のタイソン・フューリー(英国)に、5日遅れで感謝と祝福の言葉を送った。試合直後には「アンタを尊敬しない」と不遜な態度をとっていたワイルダーだが、すっかり心変わりしたようだ。
フューリーから2度のダウンを奪いながらもその後も死闘が続き、11ラウンドでKO負けを喫したワイルダー。この試合直後、フューリーから労いの言葉を掛けられ、握手を求められたワイルダーは、それを拒否した挙げ句「アンタを尊敬しないよ、ブラザー」と吐き捨てていた。怒りのフューリーは「痛々しい馬鹿野郎だ」と表現し、対戦者としてそのやさぐれた態度を嘆いていた。
試合後に予後診察で病院に直行したワイルダーは、右拳の第3中手骨の骨折が判明。地元アラバマ州に戻り手術することになり、試合を行ったネバダ州のアスレチックコミッションからは6か月の医療的試合禁止期間を命じられた。
試合後、ワイルダーは広報担当を通じて短いコメントを出していたが、公式な声明は出していなかった。その間、代わりにプロモーターのシェリー・フィンケル氏や主任コーチのマリク・スコットたちが引退を否定し、次の標的としてアンソニー・ジョシュア(英国)に興味があると話していた。
アラバマ州の自宅に戻ったワイルダーは、現地時間14日、ようやく自身のInstagramで現在の心境を語った。
「結果に失望しなかったと言ったら嘘になるが、この(フューリーとの3度に渡る戦いの)長い旅を振り返った時、神が私に体験せよと望んでいたであろうことは、私が予想していたよりもはるかに大きな価値があった。勝つために負けなければならないことを学んだ」という。
「ファンが喜ぶ勝利が欲しかった。上手く行けば、私はこのスポーツの真の戦士で、真の王であることを証明できたからね」と悔しがったが、最後に「タイソン・フューリーの勝利を祝福し、永遠に続くであろう素晴らしい歴史的なメモリアルに感謝するよ」と述べている。
試合直後には負け惜しみとも思える大人げない言動のワイルダーだったが、晴れ晴れとした投稿内容で心変わりを示した。ヘビー級のレジェンドであるマイク・タイソン(米国)やWBC会長マウリシオ・スライマンのみならず、多くの同業者や業界関係者からあの死闘に対して絶賛の声が届いたことで、冷静になったのかもしれない。
"キレイな"ワイルダーは、次の標的とされるジョシュアについて触れていなかったものの、投稿の文面的には復帰を目指すようにも聞こえる内容を記した。