【独占インタビュー】カイル・クーズマ「最も大事なのは常に希望を持つこと」(青木崇)

2019-07-03
読了時間 約2分

毎年中国で開催されている『NIKE ALL ASIA CAMP』には、成長著しいNBAの若手選手がゲストとして招かれる。6月5日から11日にかけて深圳で行なわれた今年のキャンプにやってきたのは、ロサンゼルス・レイカーズで2年目のシーズンを終えたばかりのカイル・クーズマだ。

1年目に文句なしのオールルーキー・ファーストチームに選ばれ、2年目の昨シーズンは平均得点を18.7まで伸ばすなど、身体能力とスキルの高さを持つ23歳の若手フォワードだ。8月31日に開幕するFIBAワールドカップのアメリカ代表候補にもなったクーズマとの独占インタビューでは、故郷が直面する問題を含めた様々な話を聞くことができた(取材協力:NIKE BASKETBALL)。


日本のことはいろいろ知っている

――これは日本のNBAファン向けのインタビューです。日本について何か知っていることはありますか?

クーズマ: 実はいろいろ知っているんだ。東京やサムライはもちろんのこと、ファッションでも日本は大きなインパクトがあるね。

――生まれはフィラデルフィア、その後ミシガンで育ったそうですが、フィラデルフィアとミシガンでの幼少期の思い出を何か教えてもらえますか?

クーズマ: とにかくリビングルームにいたね。子どもにとっても小さな部屋だった。2歳の頃かな、家族はカウチの周りでよく遊んでいたんだけど、そこにフリースローラインを描いてくれた。NBAでプレイしているかのように、僕はシュートを打っていたよ。

――76ersとピストンズ、どちらのファンでしたか?

クーズマ: 常にピストンズさ。

――ミシガン州フリントといえば、多くのプロバスケットボール選手の出身地として有名ですね。古くはグレン・ライス、トレント・タッカー、モリス・ピーターソン、マティーン・クリーブス、現役ではジャベール・マギー、マイルズ・ブリッジズ、モンテ・モリスなどがいます。彼らとはどんな交流を?

クーズマ: もちろん。僕はマティーン・クリーブスとモリス・ピーターソンのバスケットボール・キャンプに行って育ったんだよ。今、彼らと友達になっているのはおもしろいことだなぁと思えるし、モンテ・モリスは小学2年生時のクラスメイトで、一番の親友だ。マイルズ・ブリッジズは、彼が小学6年生のときから知っていて、地元のレクリエーション・センターでずっと一緒にバスケットボールをやっていたよ。

何か大好きなことを見つけるように心がけ、それを長続きさせることが大事

――ピーターソン、クリーブス、チャーリー・ベルは“フリント・ストーンズ”と呼ばれ、2000年にNCAAトーナメントを制覇しました。彼らはあなたのバスケットボール人生にどんなインパクトを残しましたか?

クーズマ: 彼らが成し遂げたことには大きな意味がある。フリント・ストーンズのクリーブス、ピーターソン、ベル、アントニオ・スミス(ファイナル4に進んだ1999年に4年生だったビッグマン)は若い世代に道を切り開き、フリントの街をバスケットボールの熱い都市にしてくれた。彼らは多くの子どもたちがバスケットボールに触れるきっかけを作ってくれたし、僕もフリント・ストーンズが獲得したタイトルを誇りに、若い世代に対して彼らと同様のことができたらいいなと思っている。

――あなたが育った地域は非常に危険なところだったという情報を読みました。タフな環境を生き抜くために必要だったことは何でしょうか? やはりお母さんの存在が大きかったですか?

クーズマ: フリントで育つということは常にチャレンジだ。貧困地域だから、稼ぎの少ない人がたくさんいて、悪い道に進むことを選んでしまうことが多くなってしまう。ストリートで麻薬を売買したり、人を殺したりするといったことだ。母は僕をしっかり育ててくれたし、トラブルに巻き込まれないように安全な場所にある体育館でバスケットボールをやらせてくれた。そのような環境で育ったことで言えるのは、何かをやることに対して尊敬できる誠実さを持つこと。何か大好きなことを見つけるように心がけ、それを長続きさせることが大事だと思う。

――フリントは2014年から水道の問題に苦しみ、ラシード・ウォレスがボトルの水を提供するという活動をしていました。あなたもこの問題解決の助けになりたい、ボトルの水を提供すると言った地域活動を行なっていますか?

クーズマ:もちろんだ。僕も今、何か気付きがあればフリントの街に対してできる限りのことをやっている。バスケットボール・キャンプの開催やボトル入りの水を運搬するなど、このような形でフリントのスポークスマンになろうとしているよ。フリントはすごく小さな都市だけど、結束力がとても強いコミュニティだからね。水道が使えないだけでなく、国のサポートがないから修繕できない状況にあるけど、僕は常にアクティブに関わろうとしている。

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育った過程での僕はエリートじゃなかった

――中学や高校生の頃、オールアジアキャンプと似たキャンプに参加したことがありますか? もしそうだった場合、どんなことを意識してプレイしていましたか?

クーズマ: このような大きなキャンプに参加したことは一度もないね。ここにはすばらしい可能性を持ったタレントが集まっているけど、育った過程での僕はエリートじゃなかったからね。子どもの頃はいつも体育館にいて、このような場で自分の機会がやってくるのを待っていた。小さなキャンプには参加していたけどね。

――6フィート9インチ(約206cm)の長身ながら速く走れて、アウトサイドからのシュートも得意です。子どもの頃、プレイの参考にしていた選手や、憧れた選手はいましたか?

クーズマ: 僕が好きな選手はコービー・ブライアントだ。観客だけでなく、世界中のファンを熱狂させる選手だし、そうなるためにどれだけハードワークをしているのかを見たり、彼の動きやどうなりたいのかという強い気持ちなど、すべてのことが僕にとって大きな意味を持っているよ。

――ロサンゼルス・レイカーズはアメリカだけでなく世界中、もちろん日本でも大変人気のあるチームです。良くも悪くも注目されるフランチャイズでプレイするプレッシャーとどう向き合っていますか?

クーズマ: 僕はプレッシャーというものをまったく信じていない。プレッシャーというものは、人のメンタルから作り出されるものだと思っているんだ。常にしっかり準備をして、すべてを出し切ることが、自分に求められることだと思っている。

――レイカーズでプレイすることは楽しみ以外にないわけですね?

クーズマ:その通り。

レブロンから学んだことは「ルーティンの継続」

――2017年のNBAドラフトではブルックリン・ネッツに全体27位で指名されました。今考えると低評価だったと思うのですが、指名された当時と今、ドラフト指名順位についてどう感じていますか?

クーズマ: すごくエキサイティングな気分になったよ。NBAからドラフトされることは、これまでの人生の夢として過ごしてきたからね。ドラフト会場へは行かず家にいたから、家族やたくさんの友人とすごくおもしろい経験をさせてもらった。一生忘れることはないだろうね。

――これは何度も聞かれている質問だと思いますが、昨シーズン、レブロン・ジェームズがレイカーズに加入しました。この1シーズンの彼の言動を間近で見てきて、どんなことを学びましたか? 彼の偉大なところをひとつだけ挙げるとしたらなんですか?

クーズマ: レブロンから学んだことのNo.1に挙げられるのが、ルーティンの継続だ。彼はここ16年間のキャリアで素晴らしい仕事を成し遂げてきたし、偉大な選手の一人であり続けている理由が、質の高いプレイを一貫してできるだけでなく、身体のケアを毎日続けられるからだと思っている。ジムでのウェイトトレーニングやシューティング、ゲームにおけるパフォーマンスといったすべてのことだ。

――NBA選手としての最終目標を教えてください。

クーズマ:偉大なプレイヤーの一人になることだ。バスケットボールをプレイするのが大好きだし、今をすごく楽しんでいる。それが僕の人生だし、すべてを捧げている。

――NBAを目指している日本の若いバスケットボール選手たちに何かアドバイスをいただけますか?

クーズマ: 最も大事なのは、常に希望を持つことだ。アメリカ以外の国にいるからといって、NBAが君を見つけられない、見つけることができないという意味にはならない。世界のバスケットボール人気は爆発的に拡大しているし、どこの国にいても子どもたちにチャンスが巡ってくるもの。その機会がやってきた際に準備万端の状態で、持てる能力をしっかり発揮できるようにするためにも、最大限のハードワークを毎日継続することから始めてほしい。

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