【特集】「バレーは究極のカバーリング競技」 - これを知れば楽しさ倍増! 狩野舞子に聞く、バレーボールの魅力(守備編)

狩野舞子に聞く、バレーボールの魅力(守備編)

バレーボールにおいて、守備は大きく2つに分けることができる。

  • ネット際に立ちはだかり、相手のスパイクを封じるブロック
  • サーブやスパイクを受け止め、攻撃につなげるレシーブ

「スパイクが決まるよりもレシーブが上がった方が嬉しいタイプだった」と話す狩野舞子さんは、この2つの魅力について楽しそうに話してくれた。

狩野舞子03
狩野舞子:2007年に久光製薬スプリングスに入部し、実業団でのキャリアをスタートさせる。世界2大リーグといわれるイタリアとトルコでプレーし、海外挑戦も経験。代表では、2012年のロンドン五輪で銅メダルを獲得した。国内復帰後は、久光製薬とPFUブルーキャッツで活躍。2018年4月に現役引退を発表し、現在はDAZNで解説やリポーターを務めるなど、活躍の場を広げている。

ブロックは、ただ跳ぶだけでは邪魔になる

——守備の重要な要素であるブロックでは、何に注目するべきでしょう?

ブロックは何がすごいのかはわかりづらいかもしれないですね。まずは、手をネットの前に出さないとスパイクを止められないので、横から見るときは、ネットよりどれだけ手が出ているかに注目してほしいです。

よく、「ブロックはセンス」と言われています。いくら手が出ていても、場所とタイミングが違うと、「跳ばなくていいよ」となるくらい後ろからすると邪魔になってしまいます。少ししか手が出ない選手でも、タイミングと場所の判断が長けている選手は絶対ワンタッチをとるし、手のひら一枚でも防御になり、いいブロックになります。全く違う場所で跳んでいたり、タイミングが全然合っていないと、逆に狙われることになります。

経験の中でどんどんわかっていくものだと思いますが、やっぱり難しいです。ここっていう場所に飛ぶのは、みんな当たり前のようにやってますけど、本当に難しいです。

——アタックとは違う難しさなのでしょうか?

アタックは自分の意思で跳ぶものですが、ブロックは相手主導で、それを止めにいくものなので、相手の癖、得意なコース、打ち方などをよく観察していないと止めることはできません。

ブロックにはセンスが必要

▲ブロッカーに必要なのは、いいタイミングでいい場所に跳ぶセンス(写真はVC長野トライデンツのブロッカー陣)

守備の専門職“リベロ”は「してやった感」が楽しい

——スパイカーの選手から、どこに打っても相手リベロに拾われることがあると聞いたことがあります。

それはあると思いますね。例えばサーブで3枚に並んでいますが、右側でのレシーブが得意な選手なら、苦手な左側に寄っておいて、右側をわざとに空けておいたりします。相手が空いていると思って右側に打ってきても、そっちは得意だから反応できるのです。

選手によっても違うし、チームとしても強いサイドがあって、その後の攻撃もしやすさも変わってきます。意図的に片側を空けたりとか、ブロックで右側に打たせたいから、左側は閉める、といった作戦もよく取ります。

——でもリベロは得点を取れない分、花形のスパイカーに比べると楽しくないのでは?

リベロは、相手の渾身の一撃や、渾身のフェイントとかを上げる(レシーブする)ことに喜びがあると思います。自分が上げたボールがつながって、最後にスパイカーが決めてくれる。縁の下の力持ちであって、そういう点はリベロにとっては楽しいと思います。

自分で得点を決めることができない分、必ず最後にスパイカーにつながるまでは、自分が中心となってディフェンスするというのがリベロの醍醐味。私も少しだけリベロをやったことがありますが、昔から、どちらかというとスパイクが決まるよりもレシーブが上がった方が嬉しいタイプでした。

相手の動きを見て打ってくる場所を逸早く読んで、先にそこで待っている。そういう優越感のようなものがリベロの中にもあって。相手のスパイカー潰しじゃないですが、なんて言うんだろうな……

——「してやった感」みたいな?

そうそう、それです!それはあると思います。リベロの選手には。

——ゾーンに入ったら、相手もコントロールできてしまう感じなんでしょうか?

何故か、わかるんです。絶対ここに打ってくるとか、次は絶対こっちだとか。無理だと思うボールを拾うことがあるじゃないですか。毎回同じところに構えていても、絶対に毎回トスも違うしスパイカーも違うので、その度に、「ここかな?あそこかな?」って予想するんですよ。相手がブロックアウトしてきそうだと思ったら、コートの外の方に構えることもある。そういうプレーができることが頭を使える選手だと思うし、相手にとって一番嫌な選手だと思います。

リベロは守備のリーダー

▲リベロは守備のリーダー。相手との駆け引きで得意な守備範囲に打たせることも(写真は豊田合成トレフェルサの古賀幸一郎)

バレーは究極のカバーリング競技。「One for All, All for One」

——リベロが拾いまくると、チームも勢いづくものですか?

ブロックに跳んでいても、ボールが手を抜けた時に、「あ、やばい!」と思うんです。でも、そのときに後ろで拾ってくれると、「ありがとう!!」という気持ちになるし、安心して自分も跳べる。ここさえ抑えておけば、後ろも必ず拾ってくれる、という信頼関係が、リベロの選手とスパイカーの選手にはあります。前後の関係がしっかりしているチームは強いと思います。

——攻守に駆け回るウィングスパイカーは、一番大変なのでは?

ウィングスパイカーは、レシーブもして、ブロックも跳んでスパイクも打つので、そういう忙しさはあります。ブロックでいうとミドルブロッカーが一番忙しいですね。全ての場所に(ブロックに)跳びに行かなきゃいけないので。セッターは2本目全てのボールを上げにいくので、そういう大変さがあります。リベロは、どのボールも落としちゃいけない。守備をまとめるのがリベロです。

それぞれの役割が各ポジションにあって、各ポジションごとにに魅力があると思います。

バレーボールって本当にカバーリングの競技なんですよね。だから、ボールを触っている選手に対して他の選手がどういうカバーをしているのかが重要です。一人のために全員が動くし、全員のために一人が動く。他の競技もそうかもしれませんが、バレーは究極のカバー競技だと思います。

バレーは究極のカバーリング競技

▲バレーボールは究極のカバーリング競技(写真はJTマーヴェラス対トヨタ車体クインシーズでの1シーン)

まとめ「守備では、ここに注目!」

<ブロック>

  • ただ跳んでいるわけではない。重要なのは、跳ぶ「場所」と「タイミング」

<レシーブ>

  • 相手との駆け引きで、リベロが意図的に自分が得意なサイドに打たせることも
  • チーム内の信頼関係が強く、リベロが乗るとチームが勢いづく

取材:早坂卓真
撮影:深田玲子
グラフィックデザイン:Nera Omllero

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狩野舞子に聞く、バレーボールの魅力

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