テニスの男子シングルス世界1位ノバク・ジョコビッチ(セルビア)が、2月21日開幕のアラブ首長国連邦ドバイでの大会にエントリーした。今季初公式戦となる予定だが、ワクチン未接種のままでは今後のツアー参加に困難がつきまとうことが予想されており、引退説も浮上している。
医学的免除の証拠不十分により、2度のビザ取り消し撤回裁判を経てオーストラリアからの国外退去という不名誉な結末を辿ったジョコビッチだが、2月21日開幕のドバイ・デューティーフリー・テニス選手権のエントリーリストにその名前が並んだ。全豪オープン出場が叶わなかったため、この大会が今季初公式戦になる見込みだ。
全豪OPは大会後半に入り、ラファエル・ナダル(スペイン)の準決勝入りが色々な意味で話題になっている。優勝すればビッグスリーイチ抜けのグランドスラム優勝通算21回記録達成となる。
オーストラリアテニス協会のCEOで、全豪OPの大会ディレクターであるクレイグ・タイリー氏は、ジョコビッチが2023年の全豪OPに登場することを信じているという。オーストラリア政府関係者も国外退去者に課せられる3年間入国禁止措置の緩和を示唆していた。
しかし、ジョコビッチ自身がビザ取り消しの身柄拘束時にオーストラリア政府から「虐待」を受けたとして巨額の訴訟を予定しており、状況次第では3年間の入国禁止が続く可能性も否めない。
続く5月開催の全仏オープンは、過去6か月以内のコロナウイルス陽性からの回復者にも与えられるというワクチンパスポートによって、12月末の感染および回復者であるジョコビッチも出場の見込みが立っている。
ただ、それでもその先はワクチン未摂取のままツアーに参加することには困難がつきまとう。ジョコビッチ狂想曲の特集を組む英紙『Express』は、英国出身で元世界4位のティム・ヘンマンの言葉を借り、ジョコビッチが将来的にワールドツアーを続けるのは「非常に難しい」とした。
80〜90年代の伝説的テニスプレーヤーで、ジョコビッチの元コーチであるボリス・ベッカー(ドイツ)も『Daily Mail』への寄稿で、ワクチン未接種のままなら将来を「重苦しいものにしている」と話し、ジョコビッチが"大きな決断を下す"理由があるとした。
「国際的なテニス大会をプレーすることなんて言うまでもなく、ワクチン未接種の人々は日常生活を送ることすらはるかに困難になってきている事実と向き合うことになるでしょう。私には彼(ジョコビッチ)が何を(現役続行か引退かを)選ぶか本当にわかりません」
欧州でもオミクロン株の拡大は続いており、重症化リスクの高いデルタ株から置き換わっている傾向ながら、多くの国でワクチン接種が前提になりつつある。各国状況が変化しているとみていい。米国は欧州よりももっと厳しい方針だ。同国で行われる3月のBNPパリバオープン、マイアミ・オープンにはジョコビッチは出場できないと見られている。
イタリア人女子選手初の世界トップ10入りで知られるフラビア・ペンネッタは、友人であるジョコビッチが、今後ワクチン接種をするかについて「私はそう(彼が接種を受けるとは)思わない。彼はおそらく以前よりもさらに自分自身に忠実であり続けるでしょう。ワクチン接種を受けていないことは人生の地獄になるでしょうけどね」と嘆いた。
前述のヘンマンもペンネッタも、あくまでワクチン接種は個人の選択であることを強調したが、コロナ禍において自ら困難な道を進む不世出のテニスプレーヤーの将来を憂慮した。