国外退去回避のジョコビッチにビザ再取消の懸念

勾留先のホテルからノバク・ジョコビッチを乗せた車が出ると支援者や野次馬が囲んだ

オーストラリア政府によるビザ取消に対する訴訟に勝利し、全豪オープン出場が可能になったノバク・ジョコビッチ(セルビア)になおも国外追放の可能性が残っていると英国営メディア『BBC』などが伝えた。医学的免除の理由とする昨年12月16日の新型コロナ感染についても疑問点が指摘されている。

1月5日にオーストラリア入りしたジョコビッチは、新型コロナウイルスのワクチン接種義務を回避する医学的免除をオーストラリアテニス協会指定の独立した2つの審査機関を経て認可されたはずだった。しかし、豪政府は証拠不十分としてビザを取り消した。

移民用の宿泊施設とされるホテルに移送されると、担当弁護士は即座にビザ取消の撤回と勾留解除を求めた。セルビア国内でジョコビッチの家族らが「豪政府の魔女狩りに等しい不当な勾留」とデモ行動を起こせば、ジョコビッチの収容先ホテル前でも支援者が抗議活動を展開し、さながら反ワクチン運動となった。

蓋をあけてみれば10日月曜の諮問会で、ジョコビッチのビザ取消はあっけなく撤回された。ジョコビッチの医学的免除の理由も明らかにされ、昨年12月16日に新型コロナ陽性反応が出たため、ワクチン接種ができないというものだった。豪政府の国境警備隊がビザ取消に至ったのは、6か月以内の陽性者の入国を考慮しないという理由からだったが、ビクトリア州裁判所は豪政府のビザ取消は不当と判断した。

この間、1月8日にもうひとり医学的免除の証拠不備により勾留されていたチェコの女子選手レナタ・ボラコバが国外退去となっている。陽性反応がでてから日が浅いことを医学的免除の理由だったボラコバは、入国後、5日の前哨大会に出場していたにも関わらず、6日から勾留されていた。

いずれにせよジョコビッチは解放され、勾留先のホテルから車で離れる際、周辺にはメディアに加え、支持者や野次馬が群がり異様な風景となった。解放後、自身のTwitterに「裁判官が私のビザ取消を覆したことを嬉しく思います。ここにとどまって試合がしたい」と投稿。全豪OPの4連覇・通算10度目、そしてグランドスラム通算優勝21回に挑むことになる喜びを噛み締めた。

しかし、『BBC』などのメディアは、ジョコビッチの全豪OP出場はなおも不透明だと伝える。豪政府がビザを再び取り消し、ワクチン未接種者を国外追放する権利と3年間入国禁止にする可能性が残っているという。ジョコビッチは豪当局の調査に対して、ワクチン未接種であることを話したと伝えられており、このケースに該当することになる。

また、ジョコビッチが医学的免除の理由とした昨年12月16日のPCR検査で陽性が確認された件についても疑問がもたれている。テニス専門ジャーナリストで知られるベン・ローゼンバーグ氏は、ジョコビッチが陽性とわかった翌日に子どもたち相手のイベントにマスクなしで登場していたことを指摘する。12月16日に陽性の反応がでたのち22日に陰性となったとする診断書はメディアにも提供されたが、それに従えば、17日はまだ陰性証明が取れていない隔離期間にあたる段階だ。常日頃から子どもたちとの関係性を大切にしているジョコビッチにしては、整合性のない迂闊な行動といえる。

全豪OPの1か月前であり、当初出場予定だった国別対抗戦ATPカップをわずか2週間後にしながら、陽性を公表しなかった点も"私的な個人情報"といってしまえばそれまでだが、この騒動の中ではあまりにも印象が悪い。

さらに反ワクチン派の象徴(ポスターボーイと揶揄)というイメージがより強くなったことで、今後、2200万ドル(約25億円)のスポンサー収入を失う可能性も懸念されている。全豪OPに出場できたとしても茨の道となりそうだ。

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