テニスの男子シングルス世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)が医学的免除を得て、ワクチン接種なしでの全豪オープン出場が認められたことに対して、同国のスコット・モリソン首相が免除理由の自主的開示を求めた。豪国内から反発が強まっているためだ。
予想された反発だ。ジョコビッチを含む26人の選手が全豪OP出場のため、必須とされる新型コロナウイルスの(豪政府認可の)ワクチン接種を回避する医学的免除を申請し、認められた。
オーストラリア国内からは当然のように怒りの声があがっていることを英メディア『BBC』などが伝えた。国内でワクチンを接種し、感染対策に気を配って生活しているのに、海外からワクチンなしで突然やってきてテニスができるジョコビッチらに対しての憤りは明白だ。
英紙『Guardian』ではオーストラリア人ユーザーの"視聴ボイコット呼びかけ"ツイートを引用。多くの市民がワクチン接種の有無に関わらず、国家間だけでなく州間移動も制限され、家族や友人との再開すら許されていないのに、全豪OPプレーヤーたちに"特別扱い"がなされたことへの不満を紹介している。
オーストリアを司るモリソン首相もオーストラリアテニス協会と全豪OP主催者の対応に不満をあらわにし、特にその象徴的存在といえるジョコビッチを名指しして所見を述べたと『BBC』が伝えた。
豪テニス協会と全豪OP主催者はジョコビッチ(たち)は特別扱いではないとしているが、モリソン首相は真に医学的免除を認められたというなら、その証拠を示すべきと記者団に話したという。そうでないなら、ジョコビッチがいるべき場所は「次の(帰りの)飛行機の中だ」とし、「証拠が不十分ならば、彼(ジョコビッチ)は他の誰とも異なって扱われることはないだろう」と話した。
豪テニス界の新星であるアレックス・デミノーも「非常に興味深いと思う。それが私が言おうとしているすべてだ」と同調した。同国出身で男子唯一の年間グランドスラム達成者であるレジェンド、ロッド・レーバーも医学的免除の理由を公表すべきと苦言を呈している。
ジョコビッチは2020年6月に新型コロナウイルスに感染している点や、反ワクチンの議論で語られるアイコンのひとりでもあることが批判の声を大きくしている一面もある。ジョコビッチの妻がSNS上でワクチンに関するフェイクニュースを拡散していた点など、世界的なワクチン論争の中における夫婦の立ち位置を『BBC』のアナリストが指摘した。
ジョコビッチと25人の選手が「抜け穴を利用した」という批判に対して、はたして潔白を示すのかだが、大会ディレクターのクレイグ・タイリー氏は、「ノバク(たち)がなぜ医学的免除を求め、認められた条件を説明するのであれば、確かに(事態の解決に)役立つだろうが、最終的には彼(ら)次第だ」と述べるのが精一杯だった。